基準法と条例
私たち建築設計を行う上で重要な法律に建築基準法があります。これは建築全般にかかわる法律となりますので設計に従事している人であれば十分理解をされていると思いますが、建築基準法とは別に納骨堂設計には別途個別の条例があります。これを忘れると大変なことになるのと、各市町村で内容がかなり異なり、解釈も全く違うので要注意となります。
耐火構造・準耐火構造
条例で出てくるワードで一番気になるのが耐火構造と準耐火構造です。愛知県の一部の市は耐火構造で、耐火構造を求める範囲は「外壁」と「屋根」のみと書いてあります。大分市は準耐火構造もしくは耐火構造で、「屋根」や「外壁」の文言が無いので、範囲は建築全般になります。
詳細は各役所での判断を仰がなくてはなりませんが、ここで基本の考え方や解釈を押さえることは設計を始めるにあたって非常に重要となります。
また、先ほども書いた「外壁」が納骨室に絡む外壁のみで良いのか、トイレや収納など納骨室に関係ないところは不問なのかは各市町村で解釈が変わります。納骨室と絡んでいないポーチなどが不問だと化粧柱が使えることとなりますし、建物全体を耐火構造と解釈されるなら木を見せることはかなり難しいと思います。
次に大分市は準耐火構造ですが、建物全体にかかるので、やはり耐火構造同様化粧柱など木部を露出するのが制限されます。
告示
前述の様に化粧柱に制限がかかる場合、準耐火構造の場合は告示を使って合法的に使用する事もできます。いわゆる「燃え代」という概念です。例えば1時間燃えてもこれ以上は燃えないので、残った部分が構造計算上必要なサイズが満たされていれば大丈夫と言う考えです。これがあることで柱や梁の露出が可能となります。この存在を知っているかどうかは意匠設計をする上では大きな「差」となります。
まとめ
寺院建築を進める上で木を見せると言うのは非常に重要な要素だと思います。特に納骨堂は先に書いた通り木を制限する条例があります。これは遺骨と言う檀家さんから預かったものをしっかりと火災から守りましょうという基本的概念だと思います。この基本的な概念をしっかりと設計者は理解した上で、出来る事と出来ない事を精査していく必要があります。
また、お寺の境内の中で納骨堂は一部にしかすぎません。本堂や鐘楼、庫裡など他の建築もあり、もしかすると歴史のある建築も含まれるかもしれません。設計士として良い建築を作ることはもしかすると使命かもしれませんが、お寺やそのお寺の檀家さんにとって大事なのは、永く続くことです。永く続く為に何が必要でどこにお金をかけていくのかを設計士が積極的にお寺の方と協議することは必須ではないでしょうか。
これは自分に対しての言葉でもありますが、是非お寺の方々にも気づいていただきたいと思います。