Hitorigoto

ひとりごと

名古屋別院(西別院)

納骨堂からロゴマークまで考える

・これからの寺院を考える

 

この度、名古屋別院(西別院)さんの境内地に納骨堂の設計を受けることとなりました。宝角建築アトリエとしては初めてのコンペで選ばれたので大変うれしく思っています。私は今回納骨堂と言う機能を求められましたが、現在駐車場になっている納骨堂の前のスペースを魅力的なテラス空間に計画して門徒さんだけではなく寺院に関係のない方にも普段使いしていただける場所を提案しました。

建物全体は瓦のムクリ屋根とし軒を1.4m出しました。その長い軒下にベンチを計画しましたが、これを犬矢来に模してデザインしベンチとしての機能だけではなく、使われない時も意匠になるようにと考えました。また、テラス空間も床を1.5m角にスリットを入れ三和土に模して作りました。スリットの下には縦横に側溝を入れ、ここで雨を処理します。これでテラスの床面はすべてフラットになる予定です。これはいつもお庭を計画いただいている櫻井造景舎の櫻井さんの案です。そして、1.5m角の床の一部を40㎝上げ、ベンチとして使えるようにしています。これも軒下のベンチ同様、機能と意匠を兼ねるようにするためです。

 

・新しい建築と今ある素材を生かす

お寺は地域の拠り所になれる場所だと思います。軒下やテラスにベンチを作ることで、休日にはキッチンカーを置いてテイクアウトしてもそこに座って食べることが出来ます。樹齢のある木々は夏の時期には自然なパラソルになってくれます。特別なことをせずにインド式の本堂と江戸時代の鐘楼、そして今回の納骨堂を日本建築の佇まいを残して時代的に設計することで、お寺の歴史や空気感を名古屋の人たちに身近になっていただきたいと思います。それが将来的に門徒さんにつながり寺院の経営にもつながってくると信じています。

 

・設計事務所として考える寺院ディレクション

私は今回納骨堂の依頼を受ける事になりましたが、ロゴマークやフライヤー・イベントの企画など寺院経営に必要な事もすべて参加して一緒に決めていくことになりました。寺院経営は建築を作れば終わりではなく、長期にわたって魅力的に感じていただくことが必要だと思いますので、その一部にでもかかわれることは大変光栄に思います。ただ私が一番大事だと思うのはお寺の住職や総代会など寺院の中心を担っている方の意識をリセットして、これからの寺院を再認識していただくことです。私自身こう言う意識になったのは愛知県西尾市で手掛けさせていただいた普元寺さんの納骨堂でした。ここではお茶会・俳句・寺子屋・フレンチレストランなど魅力的なことをたくさん考えられています。ここでの経験は大変勉強になりましたし、お寺に対するイメージも一変しました。この経験をたくさんの寺院に少しづつ伝えられたらと思っています。