Hitorigoto

ひとりごと

日本の美意識

日本建築

今回は日本の美意識について書かせていただきたいと思います。まず最初に、日本の「衣食住」を表現するのに、和服・和食・和風建築があると思います。普段和服を着ることは随分と少なくなってきましたが、和食と言うものは身近な存在ではないでしょうか。出汁を取って素材を煮込んだり、寿司ネタに仕込みをして握ったり・・・・。どれも素材を生かすための出汁であったり、仕込みのように思います。どれだけシンプルに余計なことをせず、素材を生かすかが大前提です。和風建築はどうでしょうか。数寄屋建築のように、余計なものをそぎ取っていって残った美しさを表現しています。代表的なものは茶室ではないでしょうか。そぎ取った必要最小限の広さが3畳や4畳半で天井の高さも約1.8m~1.9mになっている訳です。ほかにも日本の絵画に水墨画があります。墨汁だけで色の濃淡や線の細さを表現しています。その最後にたどり着いたのが「余白」で「書かない」と言う表現です。しかし、見る人はその余白に思いを膨らませストーリーを作ってしまう。西洋の油絵の文化には無いのではないでしょうか。このように日本には引き算をすることで素材の美しさを表現するという美的感覚があります。ファッションのように着飾っていくことも一つですが、そぎ取っていくことは日本人が潜在的に持っている日本の美意識ではないかと思います。私は建築でもそのような日本の美的感覚をくすぐるような設計をしたいと心がけています。余計なものを省いて、これ以上足すことも引くこともできないような緊張感のある建築を目指しています。

こちらは左官屋さんが仕上げた玄関正面の壁です。現場近隣の土と言う限られた素材の中で、左官屋さんのテクニックとセンスで完成しました。「サンプルより少し色を濃くしました。現場の空気感で最後変えました」とのこと。私は職人さんそれぞれが感じる肌感覚と言うのは絶対間違っていないと思っています。多分これをセンスと言うと思います。


こちらは大工さんが手掛けた階段の壁面です。組子の技法を使って作られました。釘での取り付けは限りなく少なくしてあります。「釘跡が見えない方が綺麗だよね」と組子を採用した理由を話されました。「さらっ」と言うのが格好いいです。

続いても大工さんです。天井の羽目板を貼っただけのことですが、隣通し互い違いに組んであるそうです。こちらも「これで数年後も開いてこないと思うよ」とのことでした。こちらもさらっと・・・。
私のような名もなき図面屋の図面をここまで表現いただけると、もっとこのような職人さんが日の目を見るようになるといいなと感じています。本人たちは芸術家になりたいとか、名前を売りたいとかと言うより、人に見られて恥ずかしくないものを作りたいという職人魂のみです。
工業製品の組み合わせで出来た規格住宅には無い奥深い美しさがそこにはあります。その美しさこそが日本人が持っている美しさではないでしょうか
「流行」と言う言葉あります。漢字では「流」れて「行」くと書きます。建築を決して「流行」で判断するのではなく、ご自身の美的感覚で判断して欲しいと思っています。その美的感覚に助け舟を求めるようであれば、名もなき図面屋はいくらでも図面を描きたいと思います。